事務所隣のアパート、そこに住む、Mくん、
元気のいい男の子、わんぱくで知られている。
ある日の午後4時過ぎ、
そろそろ帰ろうかと、用意をしているとき・・・
Mくんの部屋の一階下の、面倒見のいいおばちゃんと共に、
黄色いランドセルを背負って、事務所に来た。
黄色のランドセルは、一年生のしるし。
いつものわんぱくは、まったくなし。
うなだれている・・・
おばちゃんの話だと・・・
家に帰ったら、お母さんがいない。
鍵も閉まっている。
で、困って、一階下のおばちゃんの家のピンポ〜ンを押した。
Mくんに言う。
おばちゃん(これ、わたし)が、鍵持っているから、
ドアを開けてあげるね。
一人で、お母さんが帰るまで、待ってられる?
Mくん、小さくうなずく。
あまりにも、普段の様子と違うので、
マスクの鼻のところをつまんで、顔を見てみる。
やっぱり、あのわんぱくMくん。
お母さんに、しょっちゅう叱られている。
アパート中に響き渡るような声で、お母さんから叱られている。
でもでも、お母さんがいないと、もう、不安でしかたないのね。
合鍵で、玄関ドアを開ける。
お母さんが帰るまで、どこにも行ってはだめだよ、と念を押す。
どんなに叱られても、やっぱりお母さん。
お母さんが一番なのね。